当社協が、法人後見事業を始めなければならなかった理由

 前回、『「なぜ、当社協で法人後見事業を始める必要があるのか?」を、とことん考え、自分の腑に落とし込み、文字化すること、が、まず初めに行うこと』とお伝えしました。

 

では、具体的に当社協の例をお伝えします。

 

当時、当社協では以下2つの事業により、判断能力が衰えた市民を支えていました。

①日常生活自立支援事業

②市民後見事業

当時、それぞれが順調に件数を伸ばしていました。しかし、そのこと自体が大問題でした。

 

①は、県社協からの委託費で運営されています。

契約件数が増えていけば、それなりに人件費も増えていく仕組みです。業務に対し人件費委託料が見合わないとはいえ、件数増加には対応可能で、こちらは大きな問題はありませんでした。

 

②は、自治体からの委託費で運営されています。

こちらが問題で、件数が増加しても事業開始時の委託費は増えることはありません。特に問題は人件費です。開始時の非常勤職員1名分の人件費のみで今後の件数増に対応せねばならない状況でした。

監督報酬を得ることはできますが、1件につき15~20万円程度。新たな職員を雇用できるようになるまで、件数増に伴う業務量増大に現存職員が耐えきれないことが濃厚でした。

私の計算では、2年後には限界を迎えると思われました。

 

この大問題の解決策は2つしかありません。

 

(1)「やればやるほど大変だから、このくらいでいいや」

数年後の限界が濃厚だから、もうこれ以上件数を増やさないという選択です。何の方策も講じない、一番安易な解決策です。いや、解決策にはなっていませんね。自分たちを守るだけで、支援を必要とする人たちのことは考えていませんから。

けれども、この安易な選択をする社協の何と多いことか。県内の各事業支援件数統計を調べれば一目瞭然です。

 

(2)「支援が必要な人がいるなら、何件でも支援していく」

この方針を貫くには、どうしても人手を増やす仕組みやお金が必要になります。もちろんボランティア参加の仕組みを強化する必要がありますが、やはり職員補充が不可欠です。私は(1)の方向性に嫌悪感を持っていたので、当然に(2)を選択しました。

 

人件費を得るには、主に下記の方法があります。

1⃣補助金・委託金

2⃣寄付・会費

3⃣事業収入

 

1⃣は、新規事業開始でもない限り難しい。また、新規事業開始で得られたとしても、その後の増額は厳しいため、人件費不足問題の根本解決にはならず、ただ先延ばしになるだけとなります。

 

2⃣は、確かに自主財源として大切で可能性を秘めています。しかし、短期的に人件費を賄うほどの金額を得ることはとても難しい。また、まだまだ、寄付を人件費に使うことには世間の偏見が残っています。

 

そこで、数年後の危機に対応し、その後も永続的に人件費を安定的に得ていくために、私は3⃣を選択しました。具体的には、法人後見事業を始めることにより、後見報酬を得ていく解決策です。

また、新規事業開始に伴い、1⃣も得られる可能性がありました。

 

社協が、法人後見事業を始めなければならなかった、1番の理由は、

〇数年後の業務量増大に対応するため

〇支援を必要とする方へ、可能かなぎり支援をしていくため

に、どうしても人件費を自前で稼ぐ必要があったからです。

端的に言うと、結局はお金ですね(笑)

 

もちろんお金だけが目的ではありませんでした。

次回は、お金以外の理由をお伝えいたします。