人件費獲得以外の目的 ~その1~

前回、当社協が法人後見事業を始めなければならなかった、1番の理由は、

人件費獲得、下世話な言葉で言えば「お金」とお伝えしました。

 

この後、事業実施までには、上司、部下、ボランティア、自治体など、多くのステークホルダーの納得と合意を得ていかねばなりません。

はたして、上記の理由一つで全員の納得と合意が得られるでしょうか?

 

ステークホルダーに民間企業は、ほぼ含まれません。必然的に公的機関関係者が多くなります。この方々は「お金を稼ぐ」ことに対し、過度の嫌悪感を持っています。

したがって、そのような方々でも同意してくれる理由を提示することが求められます。

 

そこで、「お金」以外の法人後見事業を開始する理由を、できるだけたくさん引き出しにしまっておくことが必要です。説得する相手に応じて、「今はこれを出し、あちらは引っ込めておく」手法が求められます。

 

では、具体的に述べていきます。

 

まずは、誰もが反対できない理由。金科玉条は「市民のために」です。

(1)市民のために

①手厚い支援を提供できる

市民ボランティアを中心とした支援体制とする。そのため、財産管理に偏らず身上保護を重視した寄り添う支援が可能になる。この特徴は、専門家後見人に求めることが難しい点である。

②誰も見捨てない

社協が最後のセーフティネットとなる。専門家後見人でも難しいケースでも受任可能となる。

③後見制度の理解促進

①②が浸透するにつれ「社協=後見相談機関」の理解が広がる。結果、後見制度の理解と利用が進む。

 

次に、市民に含まれますが、「支援する側」のボランティアに対してです。

(2)市民ボランティアのために

①活躍の場が広がる

市民後見人養成研修を卒業したけれど、荷が重くて市民後見人を躊躇している方が多い。その方々に、比較的責任が軽い後見事業での支援員という、活躍の場が提供できる。

②市民後見人の増加につながる

市民後見人との相互連携が可能になる。例えば、市民後見で受任したけれど困難ケースだった場合、法人後見に移し替えることが可能になる。逆に、法人後見で受任したケースの困難性が排除されれば、より手厚い支援可能な市民後見人へ移行することもできるようになる。

このようなサポート体制ができれば、安心して市民後見人になろうという方が増えていく。

 

次は、金銭的にも、首長申し立てでも協力が不可欠な自治体に対してです。

(3)自治体のために

①首長申し立ての受け皿になる

困難ケースは法人後見で、手厚い支援が必要なケースは市民後見人で、と、どんなケースも社協で受任ができるようになる。顔の見える社協が受任することは、後見申し立てをし、後見人候補者を決める自治体にとって、後に責任を負わないための安心につながる。

②市民協働の推進になる

昨今、市民協働や住民参加は自治体運営のキーワードであり、基本計画にも謳われることが多くなりました。この実践例として良例となる。

③将来の財政負担軽減

社協が法人後見事業で自ら稼ぐようになれば、事業発展後の追加人件費として補助金を出す必要がなくなる。したがって、事業開始時のみ援助すればよくなるので、自治体としては安心材料となる。

④中核機関につながる

社協が実践経験を積んでいけば、国が推進している中核機関設置において、社協へ安心して委託できるようになる。

 

ちょっと長くなったので、2回に分けますね。

続きは次回で。