構想&説得期 ~その5~(対自治体)

対社内(上司&部下)の次に優先順位が高いのは、対自治体です。

 

なぜなら、新規事業開始のためには、どうしても自治体からの補助金という初期投資が必要だからです。

初期投資とは、福祉業界にとっては、イコール人件費ですね。

社協には、収益を上げて人件費を稼ぎ出す事業はほとんどありません。当然、内部留保も微々たるものです。そのため、社協が自前で新規事業の人件費を捻出することは、残念ながらできません。

そのため、自治体からの金銭的協力が必要になります。

 

社協にとって法人後見開始が必要と確信していても、自治体にとってはあくまで別法人であり他人事です。そこで、法人後見を始める事が、如何に自治体にとってプラスとなるかを示さねばなりません。

 

まず私が行ったことは、自治体の計画を読み込むことから始めました。

具体的には、基本計画と地域福祉計画の2つです。

この計画の中に、社協が法人後見を開始することにより達成可能となる項目のピックアップを行いました。

そこで見つけた主な項目は以下の通りです。

①区民協働の推進になる

市民後見人候補者の活躍の場が広がるため、市民協働や住民参加に資する実践例となる。

 

②市民後見人の増加につながる

市民後見事業との相互連携が可能となり、市民後見人に過度な負担をかけることがなくなる。サポートが厚くなるため、市民後見人を希望する区民が増える。

 

*より詳細は、「人件費獲得以外の目的 ~その1~」をご覧ください。

 

 では、上記だけで自治体はすんなりと理解してくれるでしょうか?

いやいや、そんなに簡単ではありません。

「なるほど、そうだよね。でもお金は出せないよ。」

 

が現実です。

 

そこで、財政負担についてのメリットを提示しなければいけません。

③将来の財政負担はないこと

先々は後見報酬を得る事ができるので、その後の追加費用(主に人件費)は自分たちで何とかする。だから、負担は初期費用の人件費1名分のみで、増額することはない。

④県から補助金がもらえる

法人後見を開始するにあたり、費用の1/2が県からの補助があること。したがって、自治体負担は半分で済む。

(④の提案ができるためには、県の補助制度についてしっかりと理解していなければなりません)

 

上記の理論武装をして、何回も何回も、機会を見つけては自治体担当者に伝え続けました。あまりやりすぎると、かえって避けられてしまうので、別件で顔を合わせた際に、「そういえば…」みたいに、話を出していました。

直接の担当課だけでなく、首長申し立て担当部署、現場の各包括職員、障害・精神担当者など、少しでも関わりがありそうな職員に会うたびに話題を出していました。

さらに、現場職員だけでなく、別会議でご一緒する係長や課長といった管理職の方々にもお伝えしていました。

 

結果として、対社内の承認後、1年を経て承認いただき、常勤1名分の人件費補助をつけてもらうことができました。このプロセスの詳細はのちほどに。

 

あちこちの自治体職員に伝えたことは、結構な手間や時間を要しましたが、補助金獲得よりも、事業開始後にもっと大きな効果を生みました。

関係部署の職員の方々が、法人後見の仕組みや意義を理解してくれたことにより、当初から首長申し立てからの依頼が増え、順調なスタートダッシュが可能となりました。