構想&説得期~その6~(対専門家後見人)

続いてのステークホルダーは、専門家後見人です。

具体的には3士会と呼ばれる、弁護士、司法書士社会福祉士の方々です。

 

なぜ、社外の競合相手となる専門家後見人に対し、社協が法人後見を始めるための納得と合意を得なければならないのか?

 

主な理由は以下が挙げられます。

〇今後の連携に支障が生じる

社協は3士会に何かと依頼することがあります。例えば、各委員会委員就任依頼、講習講師依頼、相続調査や不動産名義変更などがあります。

もちろん、3士会も社協とつながることにより、仕事の依頼が増えるメリットがあります。つまり、持ちつ持たれつの関係にあります。

この関係にヒビが入ると、何かと支障が生じてしまいます。

〇上司が嫌がる

上記に付随しますが、上司は波風を立てる事を好みません。そのため、穏便に進めていく必要があります。

 

そこで、私がとった方法をお伝えします。

とにかく、専門家後見人が嫌がることは、社協が後見市場に入ってくることにより、客を奪われ稼ぎが減ってしまうことです。

公平に見て、これは当然のことです。腕一本自分の力だけで勝負をしている専門家後見人にしてみれば、自治体から公的補助を得ている社協が競合相手になることに対し、不満を抱くのはごく自然なことです。

 

そこで、私は、稼ぎは減らずむしろ増えることを伝えました。

なぜなら、

〇本来業務が増える

社協が法人後見を始めて受任件数が増えると、自ずと不動産売却や相続案件が増えていきます。この手続きを社協職員が行うことは困難です。専門知識がないし、時間もありません。そのため専門家に依頼することになり業務が増えていきます。

〇そもそも競合にならない

後見制度を必要とする、特に認知症高齢者はどんどん増えていきます。したがって、ニーズが増え続けるので、お客の奪い合いとなるわけではない。

 

もちろん、全ての専門家後見人と話したわけではありません。

自治体内の社協と関わりの深い専門家後見人に限定ですが、機会あるごとにお伝えしました。

 

 

結果、「大賛成!」とまではいきいませんが、反対意見は挙がらない状態にすることまではできました。

 

なお、数年先、法人後見の開始が決定し、制度設計に着手する時期がきます。

社協でよく取られる手法は、各専門家(もちろん専門家後見人を含む)による委員会を立ち上げ、そこで決定する方法です。

しかし、当社協では、この手法をあえて行いませんでした。担当職員が考え、社内のみで決定しました。

 

理由は、もちろん事業開始までの時間が限られていたこともあります。しかし本意は、社協の法人後見が低所得者専門となることを避けるためでした。

当然、専門家後見人は安定的収入があることを求めます。安定的収入が得られる後見ケースは、資産があり安定しているケースです。逆を言うと、低所得で困難ケースは避ける傾向があります。

専門家の意見が通りやすい委員会形式をとると、社協が低所得困難ケースを専門で受任することになりかねません。もちろんそのようなケースも受任しますが、そればかりだと、後見報酬が得られず、現存職員のキャパ以上の件数を受任できなくなります。

社協の事例から、このことが見えていたので、社協も稼いで人件費を稼ぐ仕組みが必要でした。そこで、内部決定により資産が多い方でも積極的に受任する仕組みを整えました。