実践期~その3~(原則(1)できる限り、受任基準を広げ、多くの方を支援する)
制度設計の最初の原則は、「できる限り、受任基準を広げ、多くの方を支援する」です。
これを、お題目ではなく、具体的に制度に落とし込まねばなりません。
そのために作成するものは「法人後見の受任基準」です。
どの様な条件のケースを受任し、どの様な条件のケースを受けないのか、基準を作る必要があります。
例えば、
〇資産要件 一定の資産額以下とする。例えば「現金預金500万円以内とする」など。
〇累計要件 例えば「後見累計だけとする」など。
〇申し立て要件 例えば「市長申し立てのみとする」など。
があります。
ここで気を付けなければならないことは、リスクと受任件数は二律背反となることです。
要件を厳しくした場合、困難ケースやリスクは避けられるが、該当ケースが少なく受任件数は増えません。
逆に、要件を緩和した場合、受任ケースは増えますが、ケースの困難性やリスクも増加します。
得てして、大半の社協は、リスク回避や件数が増えることへの職員負担を恐れ、前者を選択しがちです。それも1つの選択ですが、公的な補助金を得ている以上、支援する件数を絞る姿勢は、私はどうかと思ってしまいます。
当社協は、原則(1)に照らすと、後者の選択になるわけがありません。当然に前者の方向性となります。
次は、どこまで受任要件を拡げるか、を決めねばなりません。
そもそも、当社協が法人後見を開始する理由の1つに「市民後見で受任できないケースを支援する」がありました。そのため、市民後見の受任基準より広い基準とする必要があります。
また、姿勢として、「絞っておいて、後から様子を見て拡げる」ではなく、「初めに最大限ウイングを広げておいて、経験を積んでいくうちに、無理な条件を絞っていく」としました。
結果、非常に簡易な以下の受任基準としました。
〇市内に住所があること
〇市長申し立てであること
の、どちらかを満たせばよい、としました。
結局、「物理的に支援に行けるのであれば支援に行く」という基準にしました。
この受任基準を、どの職員になろうと、どんな上司が就任しようと、守り続けるためにはどうすればよいか。内規や口伝では、覆されてしまう可能性があります。
唯一の方法は、要綱に書き込むことです。
なぜなら、要綱改正には、それなりの手間と承認が必要なので、法人としてはあまりやりたがりませんので。
そこで、法人後見事業要綱を新規で作り、受任基準を書き込む必要があります。
ちなみに、法人後見の要綱作成は全く難しくありません。
なぜなら、先行社協がいくらでもあるので、各社協の要綱の切り貼りで、難なく作ることができます。
まとめると、原則(1)「できる限り、受任基準を広げ、多くの方を支援する」のために作成するものは、
①法人後見受任基準
②法人後見事業要綱
の2点になります。