実践期~その4~(原則(2)できる限り、事務作業を減らす)

制度設計2つ目の原則は、「できる限り、事務作業を減らす」です。

限られた人員で、より多くの方を支援していくためには、事務作業を最大限減らし、支援に最大減の時間を費やす必要があります。

細かい取り組み含め、いくつかの対応を行いましたが、最も大きな対応策は、専用ソフトの導入でした。

 

これまで、当社協の日常自立支援事業、一般相談、市民後見事業におけるデータ管理は、主にエクセルやワードで行っていました。そのため、各種様式への転記ミスや、プリントアウトしてのデータ保存などが続いていました。

 

これらを、専用ソフト導入により、一気に効率化を図ることにしました。

導入に際し、法人後見開始のタイミングを逃してしまうと、以下の問題が生じてしまいます。

〇法人後見を現行のデータ管理方式で行うと、将来のソフト導入時のデータ移行に余計な手間が生じる。

〇それなりの導入費用がかかるので、よっぽどの理由がないと上司承認が得られない。

ということで、法人後見開始に合わせて導入することとしました。

 

しかし、大きな問題がありました。

それは、自治体からの補助金が決定し事業開始が正式決定してからでは、導入が間に合わないという問題です。

 

具体的スケジュールを示してみましょう。

事業開始決定と実施スケジュールは、依然述べたように以下の通りです。

1月 補助金決定→事業決定

4月 試行開始

10月 本格実施

 

しかし、ソフト導入には以下の作業と期間が必要になります。

導入社協の調査(1か月)

ソフト会社の絞り込み、プレゼン(1か月)

選定、社内承認(1か月)

打ち合わせ、ソフトカスタマイズ(3か月)

検証、試行作業(2か月)

既存データの移行(2か月)

と、10か月ほど要します。

 

このずれを解消する方法は1つしかありません。

それは「事業開始決定前にソフト導入を行う」です。

 

しかし、この方法を行うには、これまた大きな問題が生じます。

「事業開始が未知数なのに、ソフトを導入し費用を投入することの上司承認」です。

 

ここで、承認を得るためにも、上司の心配・反対理由を分解してみましょう。

①法人後見が開始できなかったらどうするんだ。無駄な支出じゃないか。

②そもそも、そんな予算があるのか。

 

実は、上記2つとも、対応策を事前に考えていました。さらに予算にも忍ばせておきました。

①に対して

→一般相談、日常自立支援事業、市民後見事業と一体となったソフトなので、法人後見が開始できなかったとしても、十分に事務作業効率化に資することになり、事業改善につながる。

②に対して

予備費として数百万円を計上してある(原資はこれまでの監督人報酬)。したがって、補正予算を組む必要はなく予備費充当のみ。理事会を開催する必要はない。

 

上司と数回の交渉の結果、法人後見開始の約1年前には導入許可を得ることができました。あとは粛々と約1年かけてソフト導入を行い、法人後見開始時にはソフトへの完全移行となりました。

 

なお、ソフト会社の選定ですが、やはり大きなネックは費用です。自前サーバでのソフト購入は、自治体からそのための補助金でも得られない限り無理な金額です。したがて、当方は初期費用が低く抑えられるクラウド型ソフトを選びました。

費用が抑えらる以外の利点は、即時対応してもらえること、データ管理に信用が置けることなどがあります。逆にマイナス点は、各社が使用しているため、当社協独自のカスタマイズが行えないことが挙げられます。

 

また、既存データ移行作業は相当大変です。当然ソフト会社ではなく、当方で行わねばなりません。あと、これまでのやり方が変わるので、職員が慣れるまで時間がかかるし不平不満が出てきます。1年もすれば慣れて普通になるので、意義を伝え同意を得るよう努めてください。