実践期~その7~(原則(4)できる限り、外部の力を借りる)
制度設計4つ目の原則は、「できる限り、外部の力を借りる」です。
この原則は、社協職員の方には非常に腑に落ちると思います。
なぜなら、市民の相互扶助の仕組みを作ることが、まさに社協のレゾンデートル(存在理由)ですからね。
日常自立支援事業においては生活支援員として、
市民後見事業としては市民後見人として、
市民参加を仕組み化し、多くの市民に協力いただき、事業を拡大してきました。
法人後見事業でも同様に、後見支援員として市民参加の仕組みを作りました。
職員の人数には限界があるので、市民の協力を得ない限り、より多くの方を支援することは不可能です。
後見支援員を稼働するために必要な準備は以下の5点になります。
①後見支援員の位置づけ
②雇用形態
③保険
④要綱整備
⑤実施までのスケジュール、詳細準備
①後見支援員の位置づけ
すでに稼働している、生活支援員、市民後見人と何が違うのか?
市民への説明のためにも、当社協での位置受けを明確に定義しておく必要があります。
そこで、当社協では次のように定義づけました。
生活支援員:責任も自由度も少ない。あくまで社協が決定権を持つ。
市民後見人:責任も自由度も大きい。社協はアドバイザーで、決定権は市民が持つ。
後見支援員:上記の中間的位置づけ。市民後見人になるための実践訓練の場。
ということで、市民後見人となるまでのキャリアステップは、
生活支援員→後見支援員→市民後見人 の過程を経ることを明確にしました。
②雇用形態
最低賃金に近くて申し訳ないですが、時給換算で報酬を支出します。しかし、ボランティア的な働き方のため、臨時職員などの雇用契約は適しません。また、雇用契約を結ぶと、無期転換ルールなどの影響を受けるため、ややこしくなります。ちなみに、協力してくれる市民は、決して雇用を希望しているわけではありません。
そこで、弁護士や労基署と協議の結果、委嘱という形態を選択しました。
③保険
活動中に事故に巻き込まれたり、逆に事故を起こしてしまうことも十分にあり得ます。そのための保険加入は必須になります。がしかし、②の雇用形態で入れる保険があるものか、と懸念がありました。
ところが、あっさり解決しました。社協が従来から加入している「社協の保険」で問題なくカバーされるとわかりました。
④要綱整備
これは簡単。①~③を要綱に書き込むだけのことです。既存の生活支援員要綱を流用するとすぐにできます。
⑤実施までのスケジュール、詳細準備
前述の通り、開始後1年間のスケジュールは、
4月~9月:試行期間 2~3件を受任して、実際の運用方法を検証
10月~ :本格的事業開始 大々的広報を行い、事業の本格実施
でした。
前期は後見支援員は稼働させず、職員が実践経験を積む場としました。
後期から1~2名の後見支援員を稼働させることにしました。
で、翌年から本格実施の予定でした。
このための詳細準備は以下の通りです。
〇翌年度予算への報酬反映
〇説明会の開催
〇委嘱状の作成
〇支援証の作成
などです。まあよくある事務作業です。
既存の生活支援員の方々に向けて募集したところ、約50名の登録者を得ることができました。数年先までの十分な協力者を得ることができました。
ところが、後見支援員を本格実施予定であった年に、新型コロナウイルスが蔓延しました。被後見人等への訪問も自粛を余儀なくされてしまい、現在までも後見支援員の本格実施には至っていません。
でも、ワクチン接種が進み、日常を取り戻すようになれば、当初の予定通り、後見支援員のみなさんに大活躍してもらうつもりです。