実践期~その8~((5)できる限り、不正が生じない仕組みを作る)

とうとう、「法人後見を始める方法」も終わりに近づいてきました。

制度設計、最後の5つ目の原則は、「できる限り、不正が生じない仕組みを作る」です。

 

近年、社協の不祥事が続発しています。

そのほとんどが、お金を扱う部署、主に下記②部署の横領事件です。

①法人資産を取り扱う事務局

②個人資産を取り扱う、日常自立支援事業や法人後見事業を行う後見センター部署

 

さすがに、①は社内牽制の仕組みがしっかり構築されています。逆に②は、担当職員に任せる度合いが高いため、不正が発覚しにくくなってしまいます。

 

直近の事件では、以下のようなものがありました。

日常自立支援事業による不正

https://www.asahi.com/articles/ASP5432P4P52TOLB001.html

法人後見における不正

https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/439921

 

後者の事件では、社協が受任していたケース全てを、別の後見人を選任するという措置となったとのこと。

このように、これまで、法人後見について様々な対応や工夫を述べてきましたが、不正が生じたら、社協への信用は地に落ちで法人後見は一瞬で終わります。いや、社協が終わります。

 

したがって、事業開始時点から、「常に意識する」とか「職員の善意に期待する」とかの楽観的観念論ではなく、具体的仕組みとして組み込んでおくことが必須となります。

 

社協では、以下の仕組みとしました。

①部署内で完全分業の仕組み構築

支援担当者(主担当)と事務担当(会計担当)を完全分離しました。

〇支援担当者 被後見人に対し、支援方針を考え日常的に身上保護を行う。

〇事務担当 支援担当者の移行に沿って、被後見人資産を管理し入出金を行う。また、月次の締めを行い会計報告を作成する。

〇主任・所長 事務担当者からの月次報告をダブルチェックする。

 

この仕組みにより、支援担当者が被後見人通帳の出金することを一切できなくしました。また、被後見人通帳を取り扱うことができる職員は、事務担当の2名だけと限定されることになり、問題発生の際は関与者が限定されることになります。

 

②取り扱い金額により決裁権限を限定

これは「実践期~その5~(原則(3)できる限り、現場に権限を与え判断スピードを上げる①)」で述べましたね。

不正防止と決定スピードを両立させる仕組みです。

不正防止の観点から言うと、現場担当が高額を単独で扱えない仕組みのため、不正をしようと思わせない効果を生じさせる仕組みと考えています。

 

 

これまで長々と「法人後見を始める方法」を述べてきました。

これで「準備」は全て終了です。あとは、ガンガン実践を行い、数多くの方を支援し続けるだけです。

 

次回、最後のブログで、これからの課題と解決策を述べて、「法人後見を始める方法」

編は終了といたしたします。