実践期~最終回~

前回までの準備期で、事業試行開始となる10月1日までの準備を終えました。

ただし終えたのは、あくまで想定内の準備のみ。実際に実践を始めたら想定外の事柄が数多く生じるはずです。この点はもはや「走りながら考える」しかありません。でも、事業理念の原意原則を定め共有し、最低限の事前準備は整えたので、できうる限りの備えは終えていました。

 

試行期間である半年間の目標は「1~2件の契約締結と支援開始」です。

すでに準備期中に、(なぜか)「あんしん」事業の問い合わせが数多く入っていて、先行予約者を確保していたので、問題なく目標はクリアすることでしょう。

 

前回のブログで「私自身に大きな環境変化があった」とお伝えしました。

それは、試行開始の日をもって、現社協を離れ他社協に移ることになりました。

当然、ゼロから作り上げた「法人後見」事業、「あんしん」事業を残していくことに、とくに後者は実践前であったことから、後ろ髪をひかれました。

しかし、これらの事業は、特定自治体だけが突出していても意味がありません。全国で底上げが成されて、各自治体で普及しなければいけない事業です。

だから、そのための一助になるには、どうするかを考えた結果、転職することに決めました。

 

さて、本格実践開始までの6か月間、試行実践を行いながら準備することは以下3点です。

①支援員への説明と同意

要綱を改正し、支援員の役割に「あんしん」事業の支援員も加えました。そのため、支援員への説明は必須です。コロナ禍ではありますが、できれば説明会を開催し、直接顔お合わせ説明と質疑応答を行ったほうが良いです。支援員の新規事業への理解と合意が、今後の発展にとても大きく影響していきますので。

 

②委員会、理事会などへの説明

これはただの報告です。すでに事業開始と準備状況は逐一伝えているので、開始に至った報告をしっかり忘れずに報告するのみです。

 

③広報戦略策定と実践

現在はあくまで試行期間なので、パンフレットは作ったとはいえ一般に広く配布していません。来年4月からの本格実施にあたり、広報戦略を立てる必要があります。広報媒体は何を使うのか、どこに誰に事前説明を行うのか、パンフ配布はどこに何部依頼するのかなどを、戦略を作りスケジュールを立て実践せねばいけません。

 

上記を終えれば、あとは実践を繰り返し経験を積むのみです。

同僚には、相当の負担と迷惑をかけることになりました。けれど、これまで以上に事業を発展させてくれることを期待し、願っています。

私は、新たな職場で知り得た知見を伝えて、少しでも役に立つことができればと思っています。

 

これまで長きにわたり「法人後見事業を始める方法」「あんしん事業を始める方法」をお伝えしてきました。みなさんには、ここからヒントをつかんで、それぞれの自治体で事業開始や改善に取り組んでもらえたら、こんなにうれしいことはありません。

ぜひ、みなさんの新たな取り組みを期待しています!

 

 

 

 

準備期~その5~((4)管理ソフトのカスタマイズ、オペレーション手順の共有)

さあ、準備期も最後になります。

 

①管理ソフトのカスタマイズ

すでに昨年度末に担当者と打ち合わせを終えていたので、粛々と先方が作成したカスタマイズスケジュールに沿って進めるのみでした。

再掲しますが、根本思想は「小さく産んで大きく育てる」で必ず必要となる必要最小限のカスタマイズとしました。なぜなら、実際事業を開始しないと必要な機能は分からないためです。初めて見て必要な機能を検証し、溜まったら次段階のカスタマイズを行うことにしていました。

 

②オペレーション手順の共有

①が予定通り8月末に完了しました。試行開始まで1か月の猶予をもって完成したのは、社内オペレーションの構築と検証を行う時間が必要だったためです。

ただ、仕組みは法人後見事業のオペレーションをほぼ流用可能なビジネスモデルとしていたため、ほとんど流用で(現時点では)問題ありませんでした

事業担当者、経理担当者への説明と合意を経て、オペレーションの準備も無事終えることができました。

 

次回は実践期に入ります。が一方で、本ブログの最終回となります。

理由は、私自身に大きな環境変化があったためです。

 

 

準備期~その4~((3)パンフレットの作成)

さあ次は、主に利用者に事業を説明する主要な宣材であるパンフレットの作成です。

 

すでに昨年度末、依頼するデザイナーに対面で説明を終えています。

もともと自治体広報や、他社協広報に携わっていた方なので、事業内容大枠はこの段階で理解してもらっていました。

 

作成作業は6月くらいから開始しました。納品予定は9月末。

やや開始が遅い感はありましたが、社内検討の大枠決定をしないと進められなかったためこの時期となりました。

 

このデザイナーは、ありがたいことに受け身の仕事姿勢ではありません。私の要望をそのままパンフに反映することはしない方でした。パンフ構成や各種提案は、むしろデザイナー主導で進めていきました。あくまでパンフレットを初めて見る利用者目線から意見を言ってくれました。(それが結構、作業量負担を招いたこともありましたが…)

 

デザイナーの提案で、関わる専門家(公証人や司法書士)にインタビュー依頼をしたり、自治体担当者に承認を得たりと、なかなか手間がかかりましたが、結果、構成もバッチリ、絵や写真も豊富、色分けも分かりやすい、とても見やすいパンフレットが完成。納期ギリギリで納品に至りました。

 

 

準備期~その3~((2)各様式の作成)

前回の更新から、ずいぶんと間が空いてしまいましたね。

10月から環境変化があったので、生活リズムが整うまで、ちょっと時間を要していました。(このあたりは、最後のブログでお伝えします)

 

さて、次は「(2)各様式の作成」です。

現段階で、想定しうる必要な様式を作成しておきました。

ただ、すぐに作成に入ってはいけません。

なぜなら、

〇作る担当によって、形式がバラバラ

〇作るべき様式に漏れが生じる

〇ある様式が他の様式に影響を及ぼすので、作成順番を考えず作り二度手間になる

などの問題が生じるからです。

 

そこで、まず行うことは「作成基準」を定め担当者で共有することです。

①作成基準

〇利用者に対して(主として高齢者)

・見やすいこと

→文字の大きさや行間

・統一感があること

→フォント、文字の大きさ、レイアウト

 

〇職員に対して

・できる限り、作成や記入に手間がかからないようにする

→☑を多用し文字記載を減らす

・必要情報のみに限定

→あれもこれも、必要かもしれないという考えで盛り込まない

・できるだけ枚数を削減する

→統合できる様式は最大限まとめて1つにする

 

①をしっかりと構築し、担当間で議論し合意できたら実際の作成に入ります。

 

②様式の作成

ここから実際の様式を作成していきますが、当然「(1)各要綱の新規作成、改正。契約書」が反映されます。また、各法規もしかりです。したがって、一言一句に細心の注意を払う必要があります。

ただし、ゼロから作る必要はありません。なぜなら、日常生活自立支援事業、先行団体に似たような様式があるので、それを流用することができるからです。特に日常生活自立支援事業の各様式は、県社協のチェックが入っているので、法規的にはとても信頼ができます。

では、具体的に作成した様式を下記に列挙します。

 

〇申込書、個人情報同意書

A4片面で2つを兼ねて作りました。結構単純な文面になりました。

 

〇ライフプランシート

利用者の個人情報(生年月日、財産額、通帳など)から、先々の希望(葬儀方法、菩提寺、ペットをどうするか)などを、漏れなく網羅して聞き取り記載するシートです。これが、任意後見契約、死後事務委任契約、遺言書作成時の原型になるので非常に大事です。

相当な情報量となり、全て聞き取るまではかなりの時間を要するため、次の3段階に分類しました。

・利用対象者かどうかの判断のため

担当者が自宅訪問してまず聞き取るシートです。契約を進めてくか、終局するかを判断するためのものです。支援可能な親族がいるか、資産はそれなりにあるか、などを確認します。

・契約締結ができるかの判断のため

2段階目は、受任調整会議にかけるために必要な情報を収集するシートです。預金情報、資産負債状況、将来の希望などを記載します。

・支援までに必要な詳細情報

最後の段階は、残りの詳細情報を記載します。菩提寺の名前などを記載します。

 

〇援助実施票

実際に支援を行った際の支援記録を記載する様式です。複写式で1部を利用者、1部を当法人保管とします。日常自立支援事業の様式を原型に作りました。

 

〇活動記録表

支援員が支援した場合に使用する報告様式です。法人後見で使用している活動記録表を拡張し、1枚で2事業に使えるようにしました。

 

〇預かり証、請求書、領収書

これらも日常生活自立支援事業の様式を原型に作成しました。

 

当面は、このくらいを用意しておけば良いと思います。

使用頻度が少ない様式は、実践しながらの作成で十分間に合うはずです。

 

 

 

準備期~その2~((1)各要綱の新規作成、改正。契約書の作成)

まずは「(1)各要綱の新規作成、改正。契約書の作成」です。

 

①あんしん事業要綱の新規作成

当然、新規事業を始めるために事業要綱を新設する必要がありました。

前編の「法人後見編」でも同様に、事業要綱を作りましたが、今回は非常に苦労し難産しました。

というのは、要綱なんぞは大半が定型文でコピペで作り、自らの法人用に文言を微調整で作ることが大半ですが、今回のあんしん事業は、そもそも参考とする要綱が皆無でした。実施している法人が少ないうえに、各法人の取り組みは様々であったことが理由です。

そこで、少ないながらも参考となる要綱を入手し、それを組み合わせました。あとは当法人用に微調整をかけました。

また、やっかいなのが、この事業は複数契約の集合体であるため、料金体系などが、そのサービスステージにより変わることでした。

これを要綱に表記するため、サービスステージごとに章立ての形式としました。

 

なお、この準備期から社内決定プロセスを変更しました。

これまでは、上司等の意思決定者との対面プロセスを経ていましたが、書面決裁に変更しました。というのも、ここでの作業は、これまでの決定事項を、具体的に要綱や様式などに反映させる技術的作業に過ぎないためです。

 

がしかし、案作成→修正指示→修正案作成作成→修正指示、の繰り返しです。

計7回ほどの修正を経て、9月初旬に要綱が完成しました。

 

②各要綱の改正

新事業を開始するにあたり、既存要綱・規定に影響が及ぶため改正作業が必要となりました。具体的には

〇後見センター設置規定(事業が増えるため)

〇専門家委員会設置要綱(検討する事業が増えるため)

〇支援員設置要綱(行う業務が増えるため)

などです。

まあ、これはほとんどが、事業が増えることの1文を加えるだけです。

ただ、当然、事前に専門家委員会の委員と支援員に周知と了解を得ておくことが必須です。

 

③契約書の作成

以前に述べたように、あんしん事業は、下記3つの期間を一気通貫で支援するサービスです。

 

〇元気なころ(見守り契約、財産管理契約、身元引受契約)

〇判断能力が低下したころ(任意後見契約)

〇終末期~お亡くなりになった後(尊厳死宣言、死後事務委任契約、遺言書作成支援)

 

当然に利用者と契約を締結する必要がありますが、形式は以下としました。

〇元気なころ→当法人作成の契約書(当法人が作成)

〇判断能力が低下したころ→公正証書による契約(公証役場が作成)

〇終末期~お亡くなりになった後→公正証書による契約(公証役場が作成)

 

そこで「元気なころ」の契約書を作成しました。

これも、適したひな形がなかったので、各書籍などを参考に、いくつもの契約書を組み合わせて作りました。

この契約書も、社内決裁で揉まれ完成にいたりましたが、5回ほどの修正を経ました。

 

また、公証役場が作成する2つの契約書ですが、利用者に契約書案を提示する必要があるため、参考までに作っておきました。これらは、いくつも参考文献があるので、それほど苦労はしませんでした。

 

次回は「(2)各様式の作成」についてお伝えします。

準備期~その1~(この時期に行うべき4項目の解説)

前回までで、「あんしん」事業の検討項目が全て決まりビジネスモデルが完成しました。

 

時は令和3年4月、事業の試行開始が令和3年10月から。残り約6か月間が準備期であり、決まったビジネスモデルを具体的に落とし込んでいきました。

 

この時期に行ったことは以下の4点でした。

(1)各要綱の新規作成、改正。契約書の作成

(2)各様式の作成

(3)パンフレットの作成

(4)管理ソフトのカスタマイズ、オペレーション手順の共有

 

この段階は、言うなれば技術的作業です。構想期で行っていたビジネスモデルを考え議論し合意に導くプロセスに比べれば、それほど大変ではありません。構想期が終わった時点で、すでに8割方終わったと感じていました。

 

以下に(1)~(4)を解説します。

 

(1)各要綱の新規作成、改正。契約書の作成

当然新規事業を立ち上げるため、事業要綱を新設しなければなりませんでした。

さらに、既存要綱や規定に影響が及ぶため、改正作業も必要でした。注意点としては、漏れなく影響が及ぶ要綱や規定を漏れなく抽出することに気を付けてください。

また、サービス開始にあたっては、当然利用者と契約を締結する必要があります。したがって、契約書を作成しなければなりません。

 

(2)各様式の作成

実際に支援を開始すると、支援記録の残し方、利用料の請求書・領収書、お預かりする物件の取り交わし書類などなど、様々な様式が必要になります。当然、事業開始後に想定しなかった様式が必要になることもありますが、現時点で想像しうる全ての様式を準備しておく必要があります。

 

(3)パンフレットの作成

全年度3月中に契約を結んでいたパンプレットの作成作業、これをどんどん進めていき、10月まで作成する必要があります。いくら試行期間とはいえ、お客である利用者さんにしっかりとサービス内容を説明し理解いただくために不可欠です。

 

(4)管理ソフトのカスタマイズ、オペレーション手順の共有

こちらも契約済みの件。具体的に作業に入ってもらい、カスタマイズ後の検証、運用オペレーションの決定と職員間の共有を行っておかねばなりません。

 

どうしても「(1)各要綱の新規作成、改正。契約書の作成」が「(2)各様式の作成」と「(3)パンフレットの作成」に影響を与えます。そのため、理想は(1)完成後に(2)(3)を作成することです。しかし、(3)は作成に時間を要するため(1)と並行作業で進めました。なお、(4)はほとんど(1)の影響を受けないため、独立して進行してもらいました。

 

次回は、(1)~(4)の作業について、それぞれの詳細をお伝えします。

 

構想期~その14~(17項目の制度設計3/3)

17項目の残り、⑬~⑰までをお伝えします。

長々と述べてきた「構想期」は今回でやっと終了です。

 

⑬ライフプランシートの見直し

当然に利用者の要望は時間の経過とともに変わってきます。そのため、利用者の希望(葬儀、埋葬方法、ペットのこと)を記したライフプランシートの定期的な更新が必要になります。当然、利用者の要望があったら変更しますが、年に1回の更新を義務付けました。

 

⑭突発的対応

業務時間外、すなわち休日や夜間の緊急対応をどうするかですね。当然職員負担が増えるので最低限にはしたいところです。しかし、基本理念②「できる限り、手厚い支援を行う」に照らすと行うべきでし、利用者も切望するところ思います。

そこで、常時電話による対応を行うことにしました。

 

⑮緊急連絡体制

特定の担当者に負担がかかってしまうのは永続的ではありません。そこで、緊急対応者を輪番制で行い分担することにしました。

 

⑯社内決済基準

これは前例があるのですぐに決まりました。すなわち、法人後見における社内決済基準をそのまま準用しました。

 

⑰事業名称

決めるべきは、全事業の名称と、各段階におけるサービス名の2つでした。

各段階のサービス名とは、

〇元気なころ(見守り契約、財産管理契約、身元引受契約)

〇判断能力が低下したころ(任意後見契約)

〇終末期~お亡くなりになった後(尊厳死宣言、死後事務委任契約、遺言書作成支援)

についての名称です。 

 

ちなみに、私は理屈から考えるタイプなので、こういった直感的発想が必要になることは不得手です。なので同僚に考えてもらい、良い名称をつけることができました。

 

このように制度設計すべき17項目を決めていき、ビジネスモデルが完成しました。

1月から2月の約3か月間、決裁権を持つ首脳陣との会議を月1~2回、計5回ほどの開催で合意を取り付けました。

 

4月からは「準備期」に入ります。

具体的には、合意したビジネスモデルを基に以下を作成します。

〇要綱

〇各様式

〇パンフレット

 

また、前述した管理ソフトカスタマイズとパンフレット作製は社外関係者と進めるため、3月中に契約を締結しておきました。

あと、「⑫利用料徴収、預かり金の補填」の具体的方法は、他部署ですでに行っていたため、話を聞きに行き詳細を学んでおきました。

 

では、次回から「準備期」に移ります!